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lab or love? [Psycholinguistics]

 とっても久しぶりの投稿です。最近身近にあった、単に話題としても面白く、さらに、ちょっと心理言語学的要素も絡んでいること。

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 先日、6年生は、Bangkok郊外の科学館へ1日field tripへ出かけた。Middle Schoolの、Scienceの先生達が一緒に行くこのfield trip。わたしはもちろん行かないが、残っているかわりに、「Sub(代講)」が入る。で、subをするのは、もちろん、そのscienceの先生のクラス。だから、科目はscience。

 Subは、なんだかんだと、結構入る。この前も、Bandのsubが入り、6年生に、楽譜の読み方を教えてきた(これは教えられたし面白かった!)。

 Mattの、7年生Discovery scienceが、補講のクラス。Mattは、前日に、「適当にしゃべっといてよ。よろぴくね」という感じで、Lesson planを見せてくれた。どれどれ。

 Topic: Dos and Donts in Science Lab

 化学実験室を使うにあたって、しちゃいけないことを理解し、そして、じゃ、どうしたらいいんだろう、と話し合う、というクラス。基本的には、生徒達は、Mattの用意したワークシート類を読んだり、丸を書き込んだり、色分けしたり、など、要は個人作業をすればいい、という流れ。

 その冒頭。最初のところ。Lesson planにこんな1行が。

 Please feel free to share your story/stories of accident in lab if you have.(実験室でのアクシデントについてなんかネタでもあったら、しゃべってやってね)

 ・・・ないっ!

 でも、せっかくMattが前日に見せてくれたわけだし、それに、生徒とそんなこと話すのも面白そうだし、わたしは、ネタ探しの旅に出る。

 Middle Schoolですれ違う先生たちをつかまえて、「ねーねー、ちょっといい?」と聞き出すわけだが、その聞き出し方によって、反応が面白く違う。

case A) 「明日、Mattのscienceのクラスのsubするのに小ネタがいるんだけどね」と言ったうえで、"Do you have this kind of story?"と、lesson planの1行を見せる。

case B) 「明日、Mattのscienceのクラスのsubするのに小ネタがいるんだけどね」と言ったうえで、"Do you have any stories of accident in lab?"と、口頭で聞く。

case C) 「いろんな先生に今ちょっと聞いて回ってるんだけど」とだけ言い、"Do you have this kind of story?"と、lesson planの1行を見せる。

case D) 「いろんな先生に今ちょっと聞いて回ってるんだけど」とだけ言い、"Do you have any stories of accident in science lab?"と、口頭で聞く。

case E) 「いろんな先生に今ちょっと聞いて回ってるんだけど」とだけ言い、"Do you have any stories of accident in lab?"と、口頭で聞く。

 さて、どうなるか・・・

 <ヒント、その1行の文章、および、わたしの発話部分を、是非、音声化してみてください。>

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言語情報と非言語情報 [Psycholinguistics]

先日のhabu2さんにいただいたコメントに触発されて、この記事を書き留めておくことにしました。
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 認知心理学と認知言語学と心理言語学。この三角形の関係を考えると、重なりが多く、でもここは絶対違う、というのもあり、ふと思い出して考えても、いつまでたっても終わりがない(以前は、認知言語学と心理言語学との違いについての記事を書いた→こちら)。

 この3つの中で一番大きいのは、圧倒的に認知心理学だ。ここで「大きい」、というのは、「興味の対象が広い」、という意味だ。あとの2つが、「言語」が根本的に関わっているのに対して、認知心理学は、私たち人間が知覚する情報全てを研究対象としている。そして、その情報のひとつに「言語」がある。(前にも書いたが)認知言語学は、認知心理学の考え方をベースにして「人間って実は、言語とこんな風に関わっているんだよ」というのを明らかにするのに、専ら努めている。一方で、心理言語学はというと、「言語そのもの」に、ものすごくミクロな単位の純粋な興味を示し、行き着くところも「言語とは」なのだが、その行き着くまでに、「私たち人間という媒体が言語という情報の処理に関わっている」、というところを踏まえている。

 心理言語学は、「私たちは一体、どう言語を理解したり、どう言語を産出したりするんだろう」という疑問を持っているのだが、その「言語」について考えると、どこからが「言語」で、どこからが「言語じゃない」のか、その境界線はとても曖昧なようで、でもはっきりしているようで、なかなか難しいのだ。そこで、心理言語学と認知心理学との違いを考える。

 私たちが知覚したり産出したりできる情報は、複雑で、種類を分ければ数限りない。自分の五感を駆使し、また、相手が五感を駆使することを想定して、驚くほど色々なことをしながら私たちはコミュニケーションを行っている。表情、体の動き、声の音量、声の高低、沈黙の利用、などなど。この中で、一体どれが言語(処理)に関わり、どれが言語(処理)に関わらない、と言えるだろうか。

 雑音の中で、なんとかがんばったら相手とコミュニケーションが取れるのは、どうしてか。一体、身の回りであふれかえる情報の中から、どのように私たちは意味を抽出しているのか。自分が全く知識のない言語だったら、それは周りのノイズと全く同じと言えるだろうか。いや、やはり、言語にしかない何かがありはずだ。

 例えば、2人の面識のない人間がいるとする。2人は、共通の言語を持っていない。ただ、無意味な音を発し続ける条件、そして、意味のある言語をなんとか伝えようと話し続ける条件があるとする。この2つの条件で、被験者2人を観察すれば、あらゆる面で全く異なるだろう。それは、容易に想像がつく。もしかしたら、2人は、あるレベルまでコミュニケーションに成功するかもしれない。

 だとしたら、はっきりとした「文法」「語彙」のようにはならないものの、言語を常に支える、もしくは、言語に常に関わる情報、というのがあるのではないだろうか。

 私が今学期履修しているpsycholinguisticsの先生は、prosodyを交えた言語処理の研究者として、世界的に注目されている人だ。彼女のprodsodyの話を聞くと、本当に言語とは魅力的で、しかし言語とは未知の部分が多い、と感じる。Prosodyが言語処理に関わっている、という視点を打ち出して、では、どこに関わっているのか、いつ関わっているのか、などなどと、興味は尽きない。

 心理言語学では、彼女がprosodyに視点を置いたように、私たちが知覚するあらゆる情報の中から、言語処理に関わるものを研究対象に設定することができるだろう。しかし、意外と、まだまだ未知の部分が多い。私が今ここ(具体的には、5つ前のブロック)で挙げたものの中で、どれほどの情報が、言語処理と交えて研究がされているのだろうか。

 ということで、最初に戻るが、やはり、私の頭の中で、三角形は関わり続けるのだ。


文処理研究で用いられるタスクたち [Psycholinguistics]

Simpson, G. (1994). Context and the processing of ambiguous words. In M.A. Gernsbacher (Ed.) Handbook of Psycholinguistics. San Diego: Academic Press. 359-374.

 2月上旬の週の、クラスのreadingだった。タスクについて整理したくなって、もう一度読み返している。短くて読みやすい。Ambiguous word[曖昧語]の処理の研究について書かれているが、sentence processingの研究で用いられるタスクがいくつか紹介されていて、良い勉強になったarticle。

(日/英入り交じっての記事です。不明な語がありましたら、コメントで聞いてください。また、引用している文献について詳しくお知りになりたい場合も、聞いてください。)
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Ambiguity detection method
1) 同形異義語で終わる文を呈示
2)その語に、alternative meaningがあるかどうかを、被験者はyes/noで反応
-->その文が、less frequentの意味に偏っているほうが、RTsは短い
==>more frequent meaning is activated initially
(on-lineの処理を抽出するタスクとしては、弱いのが弱点)

Priming tasks
1) 曖昧語のある文を聞く
2)targetが呈示される
3)naming task/lexical decision taskで被験者は反応
-->on-lineの様子が抽出できるタスク
-->他のタスクに比べ、異なる意味の活性化度の違いをきちんと見ることができる
-->prime呈示とtarget呈示の時間差を操作することで(例えば、文中のどこにprimeを持ってくるかを操作)、time course of meaning activationを見ることが可能

Word recognition tasks
-->いくつかある中で、lexical decision taskが最近(このarticleの出版は1994年)活発
-->他に、naming taskもこれに含む
==>lexical decision taskは、"context-dependent view"に基づいているタスクである
==>naming taskは、"initial activation processing"を見ているタスクである
-->signal-detection taskもこれに含む
-->stroop taskもこれに含む

*****留意点!
-2つのタスク(prime, target)をすること自体、本来の文理解とは異なる環境であり、実に、実験室的なデータしか得られない[実生活の文理解は、そんなに簡単に切り取れるもんじゃない、ということ]
-2つのタスクをするということは、その2つのタスク同士が、影響し合うことも留意する必要がある。タスクそのものとしても、primeやtargetの材料としても。例えば、prime語が、文中にあう場合と文末にある場合とでは、前者のほうがextra resourseが求められるわけで、両者を単純に比較することはできない。

ということで、2つタスクをしない、そのまま脳の活動を見る研究・・・
Event-related potential(ERP)study
-->priming studyの結果を食い違うこともある
-->initial processingにおけるcontextの役割を見ることができる [on-lineの様子を、まさに見ることが出来る方法なんだから、当然といえば当然]

〜〜Ambiguous word の研究について色々書かれているが、ここでは読み飛ばし〜〜

実際の実験例
Swinney (1979)
- cross-modal procedure
 聴覚呈示後、targetをcontextually biased/otherの2条件で視覚呈示。直後呈示条件と、3syllabus delay呈示条件が設けられる。これをlexical decision taskで反応。
-->contextually appropriate meaningの活性化は、delay呈示時のみにみられる

Paul, Kellas, Martin, and Clark (1992)
-stroop task
曖昧語で終わる文を呈示後、contextual meaningに沿っている語とそうでない語を、0, 300, 600msで呈示。
-->contextual meaningに沿っているときのほうがRTsが長い(0ms interval条件でもそうだった)

〜〜その他、色々あるが、今回は割愛〜〜
(ambiguous word processingに興味のある方は、どうぞ、じっくり読んでみてください)


Psycholinguisticsの"Psychology"とは [Psycholinguistics]

 "Psycholinguistics"という言葉は、日本語では言語心理学、もしくは心理言語学、と訳されるもので、ひとつの学術分野である。"psycho(=心理)"と言葉の中に入っているが、psychologyの中でも、neuropsychology(脳神経心理学?)やcognitive psychology(認知心理学)辺りの、"psychology"だと、私は解釈している。

 これを、違うpsychologyだと思っている・・・の・・・かな?という場に出くわしたことがある。

 私は、心理学に広くないが、その人は、臨床心理学とか、社会心理学のように捉えていたのではないか、と思う。Psycholinguisticsという学術分野について、「言語が関わる、人間の心理」と捉え、例えば、言語と感情(楽しい、嬉しい、はずかしい、等)だとか、言語と人間関係(社会参加、関係修復、集団内行動、等)だとか、そんな風に、その人は捉えていたのではないか、と思う。

 違う。全然、違う。

 と、言えなかったが、やっぱり言いたい。違う。

 Psycholinguisticsは、とても科学的だ。人間をコンピュータのように考えている。どんな信号を送って、どんな信号を処理して、何と何だとバグが起こって、クラッシュして、云々。まさに、コンピュータだ。

 Linguistics(言語学)は、まさに言語そのものを見ようとする学問である。で、Psycholonguisticsは、言語を用いる、ヒトを見て、そこから言語について考えようとしているのではないか、というのが、今のところの私の解釈である。さらに、これは印象にすぎないが、Cognitive Linguisticsは、Psycholinguisticsよりも、もっと「ヒト寄り」だと思う。ヒトの認知的(cognitive)な活動について、言語を通して、その可能性や性格を探ろう、という学問ではないか、と思っている。

 なんだか、とても冷淡な世界のように思えるが、私は、そんなところの勉強をしている。そして、実験そのものや、ペーパーを読んでいると、全くその通り、冷淡だ、と思う。しかし、いざ、実験を組み立てよう、という側に立つと、研究の発想というのは、実に、普段の、自分自身の人間的な生活にアイデアが潜んでいることが多い。同音異義語をどうやって解釈しているのだろう?とか雑音で声が聞き取りにいとき、何が理解に繋がるの?とか、である。

 人間的な柔らかい発想で、広い視野を持ちつつ、同時に、冷たくて、客観的な、鋭い眼力で実験を組み立てていかなければいけない。

 やはり、一人では研究というのは無理なんだな、と実感する。誰かとディスカッションして進めていかないと、こんな大仕事はうまくいきっこない。


Shadowingはただのimitationではない [Psycholinguistics]

Goldinger, S. D.(1998). Echoes of echoes? An episodic theory of lexical access. Psychological Review. 105. (2). 251-279.

 これは、クラスでも不評のペーパーだった。「それでなくても難しいことを、ますます難しく書いている」と、英語ネイティブも断言していた。それに加え、グラフのデザインが、見にくい。グラフの説明をしているテキストと、グラフそのものが、2ページも離れていたりすることもあり、flipしながら読まなければならず、ちょっと不快。仮説について、結果と考察の部分できちんとフォローがなされていない。複雑な実験方法は、Appendixになっていて、説明も簡潔でない。

 などなど、文句はたくさん出たが、でも、視点は大変面白いのだと思う。「と思う」と文末がなっているのは、結局、私はこのペーパーを消化しきれなかったから。1週間格闘したが、力尽きた。

 従来の考え方では、発話の付属的な情報(発話者の声量、話す速さ、周りの音、など)は、"noise"として捉えられ、知覚の際に濾過されてしまうものだ、とされていた。この研究は、そこに疑問を投げることに始まり、"episodic memory"として記憶に残されたtracesが、後の知覚にも影響を与えるのではないか、と問いかけている。ここで"episodic memory"として採用されたのは、「声質」で、男性と女性の声の2条件が設定されている。

 実験や研究そのものの論理は、とてもここでは説明できない。全訳するぐらいの勢いになってしまう。しかし、テキストのところどころに散りばめられる先行研究などで、興味をそそられる部分はいくつかあった。

○古典的なmotor theoryの考えでは、「発話は、産出を含むプロセスから知覚されている(mamemama訳)」(Liberman, Cooper, Shankweiler, and Studdert-Kennedy, 1967, p.452)(本文p.255)

○「Shadowingは、"shallow activity"ではない。単語が、耳から発声装置に単に「送られる」だけではない。・・・Snadowingの際、聞き手はword frequency, symtactic structure, semantic contextにも敏感になっているのである」(Marslen-Wilson, 1985)(本文p.256)

 上記の2点は、要約されたときには、確実に省かれるであろう、非常に「おまけ」的な叙述である。単語知覚、Shadowingなどに興味のあるかたには、是非、自力で読んで、ご自分のフィルターを通して感じていただきたい。

 この研究では、材料に非単語が用いられた。「実在する単語だったらどうなるんだろうね」というディスカッションは面白かった。それから、下りの部分で、実際の会話の発話では、このような実験室の知覚とは全く異なること(一語一語処理なんてしないで、命題で処理していく、ジェスチャーが大きな役割を果たす、などなど)にも触れられており、そちらにも興味を持った。

(おことわり:ここでのshadowingは、ここ数年、言語教育で盛んになっている、言語学習法としてのshadowingとは、異なる。やっていること自体は、同じだが、研究として、習得や学習、発達、第二言語、などについての空気は全く感じられない。単純に、processingのひとつの種類として捉えられている。ただ、やはり、当然のように、前置きもなく、shadowingがlisteningの作業として位置づけられていたことには、触れておきたい。)

 


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